出版社勤務のビジネス書の書籍編集者の毎日の仕事とは

私は創業して35年ほどの中堅どころのビジネス書出版社で、書籍編集の仕事をしています。

もともとは書店営業担当としてこの会社に転職してきたのですが、編集部に欠員ができたときの人事異動で編集部に配属され、以後はずっと、いわゆるビジネス書をつくってきました。

「書籍の編集者」にどんなイメージをもつかはわかりませんが、その実態は、扱っている書籍ジャンルや勤務先出版社の企業風土などによって、ずいぶん違います。

私が勤めている出版社はかなりのんびりとした風土なので、テレビで見るような活気やバタバタした感じはありません。

みんな黙ってデスクに向かい、ウェブや新聞等で新刊企画のネタや著者候補を探し、出版企画書を書き、著者さんとメールや直接会って打ち合わせをし、なかなか原稿を書き上げてくれない著者さんに催促をかけ、届いた原稿を確認して文章の整理をし、整理が終わった原稿をDTPソフトに流し込んで本文等のレイアウト作業をして校正紙に出力し、その校正紙に赤ペンで校正を入れて印刷データを完成させ、印刷スケジュールに合わせて印刷所にデータを渡し、ということをほとんど毎日並行的に行ないます。

基本的には社内個人事業のような感じなので、上記のような仕事を自分で見つけ、自分でスケジューリングし、自分で行ないます。

会社としての大まかな発行スケジュールは上から指示されますが、そのスケジュールどおりに発行できるのであれば、途中の仕事の進め方やタイムスケジュールなどはすべて自分で決められます。

やることが多いし、時間もそれなりにかかって大変な仕事ですが、給料は安いです。勤続25年で年収が400万円いくかいかないか。大手はどうか知りませんが、中堅どころはこんなもんです。

それでも本づくり自体がけっこう好きなので続けています。

なかでも個人的には、DTPソフト上で本文レイアウトを考えたり、そのために使う各種アイコンや写真等を探したりする作業が好きだったりします。一方で、本文で写真等を使用するための使用許可を各社に取るような仕事はつまらないのでちょっと苦手です。

この仕事で辛いのは、「原稿がないと仕事ができない」ことです。

なかには、いくら催促しても書いてくれない著者さんもいます。締め切りを決めて約束をしたのに、実際に入手できたのは約束の2年以上あとだった、なんてこともあります。

けっきょく書き上げられずに没になることもあります。そういうときは、それまでに使ってきた時間や労力を考えると辛くなります。

でも、この仕事をしているおかげで、普通であればなかなか会えないような人に取材や執筆依頼という名目で会えたりします。自分の知らない世界の話を聞けたりするのは楽しいです。

ただ、書籍そのものは残念ながら、なくなりはしないでしょうが衰退していくジャンルだと思います。

ですから、もしこれから書籍の編集をしたいと思うなら、紙の書籍でしかできないことを追求して100年先にも残る本をつくるのか、それとも日常的な消費財として読み捨てていく本をつくるのかのどちらかに気持ちを振り切る、ということが必要に思います。

単純に「本が好きだから」では、市場に受け入れられる本をつくるのは難しい時代になりました。

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